rxTools開発と法律


#注意 間違いがあったら指摘してください.

#キノコ帝国 いつもなら法的な問題だって, 「まあ大丈夫だろ」程度に軽く見ているわけだが (注: もちろん意図して法を犯すことはないですよ) , 今回はそうはいかない. なんて言ったって強力な法律軍団を擁しているとされる某キノコ帝国のゲーム機, 3DSをハックしているのだ. しかも某キノコ帝国対外政策本部は知っての通り日本の京都にある. 最近はイカの協力を受けたとか乗っ取られたとかでやたら勢いが強いが, そんなのに歯向かうような馬鹿な真似はしない. そのため, より慎重に法律を吟味する必要がある.

#法律 今回問題になってくるのは著作権法と不正競争防止法のDRMに関する規定だ.

##著作権法 原文はこちらを参照されたし.

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html

###規定 用語の定義等は引用しない. 原文を参照されたし

####第三十条 > 第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
> 二  技術的保護手段の回避(第二条第一項第二十号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

やたら厳しい. 抜け道は全く無いように思える. 実際ない. しかし, これはあくまで第三十条においてだ. 第四十七条にはこうある.

第四十七条の三  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。
2  前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

この複製は「自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において」行えるとのことだ. 第三十条で書かれているように, 「私的利用」ならどのような目的でも良いというわけではない.

なお, これに反すると, 著作権の侵害となり, 民事訴訟や告訴による刑事訴訟の危険に晒される.

####第百二十条の二 > 第百二十条の二  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
> 一  技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者
> 二  業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行つた者

ここで重要なのは, 「当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。」との規定だ. すなわち, 技術的保護手段の回避には多くの部分が不足している, 私が投げているパッチ群は, これに含まれない.

更に, rxToolsには暗号鍵が含まれていないことにも注意すべきである. 暗号鍵が含まれたツールは同様の記述があるアメリカのDMCAに引っかかって公開中止されたりするが, 今回の場合暗号鍵は含まれていない.

##不正競争防止法 原文はこちらを参照されたし.

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO047.html

###規定

十  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)
十一  他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)

また著作権法と同じような記述がある. これは無視できる.

当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。

また, GitHub上のリポジトリについても, それを問題ないとする, 著作権法と同様の記述がある.

影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。

もっぱらGitHubの仕様に合わせるためだけに使っている私のリポジトリは関係ない. 幸いにも, rxToolsは「当該機能」以外の機能を複数併せ持っているし, 「本家にPull Requestを発行する」というのも重要な機能である. というかそれ以外ぶっちゃけどうでもいい. 繰り返すが, 本家本元がGitHub上にリポジトリを持っているのに, そのような目的で公開するわけがない.

#結論 ということで, わざわざ抜け道が用意されていたりするので合法である. まあ, 考えれば当たり前のことだ. ただの性能向上のパッチが違法行為を促進する効果なんて無いようなものだし, 所有権を有するプログラムを実行するために技術的保護手段を回避したところで誰かが不利益を被るようなことはない.

とにかく, 開発者は法律をしっかり守って開発に取り組もう. それと, いつだって某帝国には感謝している. 早くゼルダ新作やりたいんじゃ.

#更新 詳細はGitHub上でコミットログを参照せよ.

2015年8月12日: GitHub上のリポジトリについてと「注意」を追記.

2015年12月31日: 解釈の一部訂正.

2016年2月21日: 暗号鍵が含まれていないことに関して記述を追加。

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